「神童」Julian Newman の現在
Julian Newman とは
略歴
アメリカ人のアマチュアバスケ選手。Wikipedia によれば、2001年生まれなので2021年4月現在19才。小さい頃から父親に鍛えられて、5年生の時には既に高校の “varsity team” に呼ばれてプレーするようになり、YouTube に上がったハイライト動画がバズって有名人になったらしい。
日本人的に言うと、亀田三兄弟や福原愛ちゃんみたいなものと思ってもらえれば、当たらずとも遠からずか。
5年生? varsity team?
ちなみに、アメリカの場合は、elementary school, middle school, high school の年数が州によって違う。馴染みの無い人は、以下の Wikipedia も参照。
さらに言うと、Varsity team というのも普通の人は意味が分からないと思う。自分も分からなかったので Wikipedia を見たが、それでもあまりピンとこなくて、その後で以下のページを見たら大体分かった。
Varsity と Junior Varsity – アメリカ英語とアメリカ文化
5年生で varsity team に入るのは、かなり凄いこと。
家族
Julian の父親は、コーチ兼マネージャーみたいな感じ?Julian をフィーチャーした「Prodigy Brand」というのも立ち上げてグッズ販売とかもしてるらしい。
妹の Jaden もバスケ選手らしい。どうでもいい話だけど胸がデカい。
彼を知ったきっかけ
自分は、バスケが好きで動画とかをたまに見るせいか、Facebook のタイムラインにバスケ関連の記事・動画などがよく流れてくる。その中で、2017年に行われた以下の youth camp の動画をたまたま目にした。
感想としては「上手いけど、嫌なやつそうだな」というありきたりなもの。動画のコメントでも同じような意見が多い。
ちなみに、マッチアップ相手の白いビブスの413番は、Jaythan Bosch 君というらしい。この動画だと互角にやり合っていて、最後にシュートを決めるシーンで終わっているので、実力的にも同じくらいに見えるが、実際にはこの試合では Julian Newman の方が上回っていたらしい。ただ、それも無理は無く、Jaythan は学年は2つくらい下のはず。
で、Julian の現在
オファー無し
結論から書くと、昨年の段階では
- NCAA の Division I の大学からはどこからもオファー無し
- 海外でプロを目指す
らしい。2021年になっても何のニュースも無さそうなので、多分状況は変わってないんだと思う。
主要サイトでも選手ランキングには入っていない。
Division I ?
NCAA の Division 1 (D1 と略すことも多い) は、簡単に言うと強豪大学。NBA プレーヤーの大半は、D1 の大学からバスケで奨学金をもらって、そこから NBA 入りしている。
日本人での D1 プレイヤーは過去に何人かいる。八村塁は D1 の中でも強豪校のゴンザガ大学からドラフト一巡目指名されたという超エリート。渡邊雄太は、D1 だがそこまで強豪校では無いジョージワシントン大出身で、ドラフト外で NBAまで上り詰めた、割と珍しいタイプ。
日本人初めての D1 プレイヤーは高橋マイケルだと思うけど、卒業後に日本に帰化しているので例外か。それ以外だと、KJ 松井とか数えるほどしかいない。追記: 以下にまとめた。
NCAA Division I でプレイした日本人 – K blog
ちなみに、日本人初の NBA プレイヤーとなった田臥勇太は D2 のブリガムヤング大学ハワイ校。
話を戻すと、D1 でプレイすることが NBA 入りの必須条件では無いが、外国人や以前は許可されてた高校卒業後に直接 NBA 入りしたのを除くと、D1 でプレイせずに NBA 入りした人は稀だと思う。というか思い浮かばないのでググったら、Scottie Pippen がいた University of Central Arkansas は、当時は D1 じゃなかったっぽい。
ランキング?
アメリカのメジャースポーツでは、学生でも選手のランク分けがされていて、ESPN のようなサイトでは★の数1〜5で評価されたり、上位の選手であれば順位付けまでされる。Julian は★無し。
高校時代
Julian が高校で活躍し始めてから卒業するまでの主な軌跡を書いてみる。
Downey Christian → Prodigy Prep
元々は Downey Christian という高校でプレーしていて、その後、父親が作った Prodigy Prep に転校して、そこで父親がコーチのチームでプレーしていた。
Downey Christian は、それほどレベルの高い高校では無かった模様。Prodigy Prep も同じような感じらしい。
ちなみに、prep school についての説明は、以下のページが分かりやすい。
Prodigy?
Julian 自身のブランド名が Prodigy で、彼のために作った(と思われる)学校が Prodigy Prep。昔、Prodigy ってバンドがあったものの、単語の意味は気にしたことは無かったんだけど、今回気になって調べてみたところ
神童
という意味らしい。へー。
どんどん追い抜かされる
さて、その神童君。身長も低く、バスケ IQ もあまり高くなく、そこまでレベルの高いチームでプレーしているわけでもなかったせいか、高校時代も後半となると、周りにどんどん追い抜かされていった。
日本の野球でも、小〜中学時代の有名人が伸び悩んだり、甲子園のスターがプロで活躍できなかったり、そもそもプロになれなかったり、というのは枚挙に暇がないし、良くある話かと。
現在 NBA で活躍中の LaMelo Ball がいる Spire (強豪高校)とのゲームのハイライトを見ると、手も足も出ないわけでは無さそうだけど、実力差はかなりありそう。
田中力とのマッチアップ
Spire と同じような強豪校である IMG との試合のハイライトがこちら。
紺に赤のジャージの4番が Julian。そして、白地に青のジャージの IMG で Julian にマッチアップしているのが、日本人の田中力。シュートを決められている場面もあったけど、結構押さえ込んでいる。それよりも気になるのが、IMG の他の選手の体格が全員高校生離れしていること・・・
この試合では、Julian は観客から「overrated!!」(過大評価)のコールを浴びせられている。少し可哀想ではあるけど、過去の傲慢な振る舞いとかを考えると仕方ないか。
そして、1年後くらいの2020年にもマッチアップしている。Julian が、前述の通り Prodigy Prep に転校しているけど、番号は変わらず4番。そして、IMG の田中力は2番に変わっている。
見る限り、田中力が Julian をほぼ完全に押さえ込んでいる。チームとしても実力差がある。Prodigy Prep では、3番の選手の方がまだ頑張っていた。
同世代の他のプレーヤー
現時点ではすっかり他のプレーヤーに抜かされてしまった Julian Newman。では、同世代の他のプレーヤーはどうなっているのかを簡単に紹介する。
LaMelo Ball → NBA 新人王候補
LaMelo Ball は、Julian Newman と同様に、若いときから注目されていた。ただ、書くまでも無いけど、LaMelo は、2020年のドラフト1巡目3位指名で NBA 入り。20-21シーズンで早速活躍して、新人王有力候補の1人。
Jaythan Bosch → D1 オファー無し
最初の方で動画で紹介した、中学生くらいの時の youth camp で Julian に標的にされていた、寡黙な感じの白人の男の子。
現在、身長は Julian より大きくなって、スキルも伸ばしている模様。ただ、同学年のプレーヤーランキングには入っていないし、D1 からの具体的なオファーは無さそう。
彼は Julian とのマッチアップで注目されたけど、それが無ければ、全米に数多いる D1、NBA を目指すプレーヤーの1人というのが現状っぽい。興味のある人は以下の動画をどうぞ。
Jaythan Bosch: “Evolution” Episode 2 – YouTube
Zion Harmon → West Kentucky
Zion といえば Zion Williamson だけど、それとは別人で、Julian の親友らしい。一緒にトレーニングしたりもしてたみたいだけど、学校は違う。
ランキングはサイトによって異なるが、全米で50〜100位。身長は Julian より少し大きいくらいの 5’10 (約178cm)と、体格に恵まれているわけでは無いけど、D1 からのオファーがあり、West Kentucky への入学が決まった(?)らしい。
Zion Harmon, Marshall County, Point Guard
Kyree Walker → D1 オファーを蹴って NBA 入りを目指す
8年生の時(?)のダンクのビデオで注目され、Julian ほどじゃないけどネットでの有名人だったらしい。
ダンクのビデオはこちら。
コメント欄を見ると、re-class している模様。アメリカの場合、スポーツ選手が同じ学年を2年続けてやったりするのはそんなに珍しくない。
上の動画のコメント欄では色々言われているけど、ランキングには入っている。247sports では、2021/1/5付けで211位。4〜5年前は top 10 くらいだったので、大分周りに抜かされているが、それでもランキング入りしている。
Kyree Walker, Hillcrest Prep, Small Forward
大学からのオファー(D1?)もあったようだけど、それを断って今年のドラフトでプロ入りを目指すとか。
Emmanuel Maldonado → D1 オファーあり
Julian の元チームメートで、Julian の動画のコメント欄では彼より良い選手と言っている人が多く、自分もそう思う。
そんな彼は、Prodigy Prep から元々いた Downey Christian に転校したらしい。Prodigy Prep は Julian のためのチームで、そこにいては成長出来ないと思ったとか、そんな感じ。この時期の2年位を無駄にしたのは大きいと思うけど、それでもずっと残るよりはマシか。
ランキングには入っていないけど、Bethune-Cookman という大学からのオファーがあったとか。聞いたこと無いのでググったところ、一応 D1 らしい。
Emmanuel Maldonado, 2021 Shooting guard – Rivals.com
感想その他
スポーツの世界は厳しい
ありきたりな感想だけど、スポーツの世界は厳しいと思った。小さい頃に神童と騒がれた人も、中学、高校に入れば、同じレベルの「神童」がうじゃうじゃいて、そこから抜け出さないと大学、プロになれない、と。
若い頃に注目された同年代の選手で、小さい頃からの名声をそのまま保っているのは LaMelo Ball だけ。Julian の親友だった Zion Harmon が、現在のランキングを考えると、今後成長し続けて運が良ければドラフト2巡目で指名されるかも、くらいか。
LaMelo Ball との違い
LaMelo Ball も、DQN なオヤジ LaVar Ball がいて、小さい頃から注目されていたのは Julian と同じだけど、何が違ったのだろうか。
一番違うのは、父親のバスケ選手、プロスポーツ選手としての経験の有無かと。LaVar は、NFL でプレーした経験のある、元プロスポーツ選手。あと、Wikipedia を見るまで知らなかったけど、バスケでも D1 の大学で1年だけプレーしてたらしい。
対する Julian の父親(と母親)は、バスケの選手だったらしいけど、高いレベルではやっていなさそう。
2番目の違いは、切磋琢磨する相手の有無。LaMelo は、2人の兄も NBA プレーヤーだし、高校もレベルの高い学校でトレーニングを積んでいた。片や Julian は、自分のために作られたチームで競争も無く過ごしていた。
3番目は、身長。Julian は、まさか大人になっても170cmくらいまでしか伸びないとは、周りも想ってなかったと思う。170cm で NBA 選手になるのは不可能では無いが、かなり厳しい。
例えば、田臥勇太は173cm。NBA では4試合のみ。低身長で活躍した NBA 選手として有名なのは、Allen Iverson がまず思い浮かぶ。彼は公称180cmくらいだが、実際は175〜178cmくらいだったか。ただ、彼の場合は爆発的な身体能力と多彩なスキルがあった。
その他は、160cm の低身長だけど数シーズンに渡ってシャーロット・ホーネッツの正 PG だった Muggsy Bogues、168cmでスラムダンクコンテストで優勝した Spud Webb とかだけど、まぁ例外。
日本での「神童」
似たようなのだと亀田三兄弟が思い浮かぶ。彼らもオヤジが子供を厳しく育てるところは一緒。ただ、亀田三兄弟は、微妙なマッチメイクや疑惑の判定などで批判が多かったし、比較的層の薄い軽量級というのもあるが、曲がりなりにも世界王者になっているので、神童のまま大人になっても成功したパターンかと。
同じ格闘技系だと、それこそ「神童」と呼ばれている那須川天心もいる。今のところ成績は素晴らしく、才能を認めているプロ選手も多くいる反面、強い相手と戦っていないなどの批判もある。いずれにせよ、今後強い相手と戦って評価を高められるかどうか、というところか。
元「天才卓球少女」福原愛も、オリンピックでメダルを取っているので、神童のまま大人でも成功したパターンか。
こうやって見ると、割と成功パターンが多いように思えるけど、成功したから単に人々の記憶に残っているだけの気がする。