過去・現在の元神童達
割と最近、以下の記事を書いた。
「神童」Julian Newman の現在 – K blog
そして、つい数日前、今更ながら Google Search Console の設定をしたところ、意外に Julien Newman で検索してる人が多いことに気づいた。
書いたときは、
「アメリカのアマチュアバスケ選手で、しかも今はあまり話題に上らなくなった人だし、誰も読まないよなー。ま、調べたことのメモ代わりに書いとくか」
くらいの感覚だったんだけど、世界は広いね。こんなニッチなキーワードで検索する人がいるとは。
「神童」はロマンがある
さて、本題。それで思い出したんだけど、「神童」って何か心がときめくよね。
「将来どれだけ凄くなるんだろう」
「○○は超えるんじゃ無いか」
など。
結局、早熟の天才だったり、そもそも若いから身体能力だけでやって活躍していただけだったり、ってのが大半な訳だけど、それでもやっぱりロマンがある。
今回は、自分の思い入れのある、あるいは今気になっている元神童達をランダムに取り上げてみたい。
昔の選手
シーフォ(ベルギー、サッカー)
80年代〜90年代に活躍した、ベルギーの中盤の選手。若い人は知らないと思うので、とりあえず Wikipedia を貼っておく。
Wikipedia を見ただけの人は、
「え?普通に活躍してた凄い選手じゃん」
と思われるかもしれない。しかし、そうではない。
Wikipedia には
フランスのミシェル・プラティニが評して曰く、「20世紀最後のゲームメーカー」。
エンツォ・シーフォ – Wikipedia
としか書かれていないが、当時はプラティニが「自分を超えるのは彼」くらいの評価をしていたような曖昧な記憶がある。その記憶が正しいかどうかはさておき、
- 17才でベルギーの名門でデビュー
- 18才で初代表
- 20才でW杯4強に導く活躍
となれば、20代中盤〜後半になる頃には、それこそプラティニを超えるプレーヤーになるかも、と多くの人が期待した、らしい。が、結果としては一番輝いたのは20才でのW杯。早熟の天才だったのかも。
自分が彼の名前を知ったのは90年W杯前後。24才頃。まだギリギリ若手と言っても良い頃。W杯では、最終的に4位に入るイングランドに決勝トーナメント1回戦で1-0での敗戦。直接試合は見ていないけど、雑誌で存在を知った。
そして、91年にイタリアのトリノに加入。25才頃。当時のセリエAは、世界最高峰リーグで、他の国を圧倒していた。グランデミランが始まったのもこの年。トリノは中堅チームとは言え、当時のセリエAのレベルを考えると、今のプレミアリーグの2番手グループ(チェルシーやトットナムとか)と同格くらいか。
18才からベルギーを引っ張る天才が、トリノをどう操ってミランを倒すか、と思って期待してみてたけど、実際にはそこまで顕著な活躍はしなかった。と、記憶していたが、Wikipedia を見ると
- 91-92シーズン、セリエA 3位(ミラン、ユベントスに次ぐ)
- 91-92シーズン、UEFA カップ準優勝
- 92-93シーズン、コッパイタリア獲得
と実際はかなり活躍していたっぽい。記憶というのは曖昧なものだ・・・
正確には、彼の活躍なのか、他のチームメートの活躍なのかは不明だなと思って、ちょっとリンクをたどってみたら、
Torino Calcio 1991-92 – Torino F.C. – Wikipedia
そうだレンティーニがいた。
トリノの躍進はシーフォじゃなくてレンティーニの活躍が大きかったのかもしれない。そうでなければ、シーフォがビッグクラブに行っていたはずだし。
いずれにせよ、彼は、その後もそこまで大活躍はしないまでも、ベルギー代表として4回のW杯に出て、2002年に引退したらしい。
最後に、YouTube で検索して一番良さそうなのを貼っておく。
財前宣之(サッカー)
中田英寿と同年代で、その後の中田の輝かしいキャリアと比較されたりしてるので、知っている人も多いかもしれない。
自分は、彼の「神童」時代のプレーは見たことが無い。当時は YouTube なんてもちろんないし、サッカー情報は雑誌とかでしか手に入らない。が、それでも読売クラブに天才少年がいるというのは何となく知っていた。
Wikipedia などの情報をまとめると以下の通り。
- U-17日本代表
- 1995年、20才の頃にセリエAのラツィオに短期留学。練習で、元イタリア代表のネスタを手玉に取る
- 1996年、当時スペイン1部のログロニェスに移籍
- この頃に靱帯断裂しているはず
天才という活躍をしてたのはこの辺りまで。その後も、J1、J2 で、度重なる怪我にもかかわらずしぶとく活躍はしてたけど、10代の時の輝きからすると、やはり物足りなさが残る。
辻本賢人(野球)
15才で阪神にドラフトされたという、漫画のような神童。
最初はじっくり育てる方針で試合にも出なかったけど、試合に出るようになってもあまり活躍はせず引退してしまった印象。
Wikipedia を見るまで知らなかったけど、アメリカでマイナー契約を結んだりしてたので、全くダメだったというわけではなさそう。
前述の財前や小野伸二などのように、怪我が原因(だけではないけど)で輝きを失ったって訳でもないので、早熟だったんだと思う。
この動画を見るまで気づかなかったけど、ハンカチ世代なんだ。
最近の元神童
岩渕真奈(サッカー)
2008年、15才?位の時にU-17 W杯でMVPを獲得し、将来を嘱望される。一部のファンには「マナドーナ」と呼ばれる。
その後、ドイツに渡るが、日本での女子サッカー自体の人気の無さも、なでしこジャパンの低迷もあって、あまり話題を聞かなくなる。
そんななか、つい先日の東京オリンピックで久しぶりに見たが、エースとして孤軍奮闘していて嬉しかった。自分みたいなライトなサッカーファンにとっては、東京オリンピックで久しぶりに活躍を見たって人が多そう。
Wikipedia を見てみると、あまり話題になっていなかっただけで、ヨーロッパで順調に成長してるし、代表でも活躍しているので、いわゆる「元神童」とは違うかなとも思う。
ただ、U-17 とかの活躍を見ると、レジェンド澤穂希さんを超えるくらいの活躍を勝手に期待してた。
映像はあまり良いのが見つからなかったけど、いくつか挙げておく。
清宮幸太郎(野球)
高校通算111本塁打の最多記録を持ち、2017年のドラフト1位で日ハムに加入。王貞治の本塁打記録を抜きたい、みたいなビッグマウスで驚きやら失笑を買ったのを覚えている人も多いかも。
- 1年目は、打率2割なものの、本塁打は7本打って、今後の期待を抱かせる
- 2年目も、打率.204と低打率だが、7本塁打、打点は昨年より伸ばして33打点
- 3年目は、初めて怪我無しで終えたシーズン。相変わらずの低打率.190。本塁打は変わらず7本で、打点は前年より少ない22打点
来年には、同い年の大卒新人選手が入ってくるので正念場だが、2021年はまだ1軍出場は無し。イースタン・リーグでは78試合に出場し、打率1割9分5厘、13本塁打、41打点、とのこと。2軍でも低打率というのは頂けない。
今の時点で断定するのは早いかもしれないけど、彼にはそこまで野球センスは無いのかもしれない。高校時代までは恵まれた体格、身体能力で活躍できていたけど、プロに入ると彼くらいの体格・身体能力の選手はゴロゴロいる。
「でも、身体能力の高い他の選手でも、111本は打ってないし、彼に特別の才能があるのでは?」
と思うかもしれない。でも、高校野球(プロでもそうだけど)のグラウンドは広さもまちまちなので、あまり参考にならないのかもしれない。以下の高校通算本塁打数4位の人のインタビューを読んで欲しい。
高校通算95号 清宮に抜かれた男の本音 (2017年5月23日) – エキサイトニュース
ちなみに、以下がランキング。
ただ、改めて見てみると、(神港学園の2人を除けば)全員プロ入りしていて、全く活躍していない選手もほとんどいないので、清宮は(今のところ)この中でも一番の外れかもしれない。
それ以外の要素として、彼の父親はラグビー選手・監督として活躍した清宮克幸。家には充実したトレーニング環境があったようだし、父親からトップアスリートとしての心構えなども教育されているだろうし、そうした環境面でも他の選手と差が付いた理由かもしれない。
親も成功し、子供が大成したスポーツ選手としては、Julien Newman の記事のところで触れた LaMelo Ball が挙げられる。同じバスケだと、Stephen Curry もそうだし、渡邊雄太もそう。
そう考えると、清宮は
- プロ入り直前(高校)まで活躍していた
- 身体能力も(傑出はしていないが)プロとして十分
- 大きな怪我はしていない
- 一流選手だった親の教育を受けている
ということを総合的に考えると、まだまだ化ける可能性もあるし、今後に期待したい。
久保建英(サッカー)
ご存知、バルセロナ下部組織 → FC 東京 → レアル(レンタルに出されている)という久保建英。
バルサの下部組織に入るだけでも凄いし、レンタルに出されているとは言えレアルと契約をしているのも凄い。20才で、U-23 日本代表の主力なのも凄い。
とは言え、12〜3才の頃にはバルサの下部組織でも突出していた彼が、19才の時にビジャレアル、ヘタフェでレギュラーを勝ち取れずに出場機会を得られないという状況は、伸び悩みと言っても良さそう。
でも、こないだの東京オリンピックでの活躍や3位決定戦敗戦での悔し涙などを見ると一皮むけた感じもするので、今シーズンに期待。
ルカ・ドンチッチ(バスケ)
- 16才の時にスペインでプロデビュー
- 19才でスペインリーグMVP
- 同じく19才で NBA ドラフト3位
- 20才で NBA 新人王
- 21才で NBA オールスター出場、オールNBAファーストチーム
彼は、今回紹介した他の選手と比べると、順調すぎるほどのキャリアを進んでいる。後は、優勝を何回かすれば、ジョーダンまでは行かなくてもコービー・ブライアントやレブロン・ジェームズを超えるくらいにはなるかも。
そう言えば、レブロンもドラフト1位指名後、30代後半となった今まで、ずっとトップ選手であり続けているのも凄いな。
まとめ
ここには紹介していない人も含め、思ったほど活躍しなかった元神童は以下のように類型化できそう。もちろん1つだけに当てはまらない場合もあるけど。
- 早熟のため周りの期待値が高すぎたが、普通に活躍 → シーフォ、岩渕真奈
- 怪我 → 財前宣之、小野伸二
- 小さい頃は才能、体格で活躍してた → 清宮幸太郎、背が高い小中学生バスケ選手の大半
- 「早熟」に含めても良いかもしれないが
- 天狗になった、モチベーションの低下 → 前園真聖
最後に、「神童」で検索して出てきた興味深いページを紹介して、このブログ記事を終わりにしたい。自分が言いたいこと・思っていたことの8割位を言ってくれてる。
早熟の子を「神童」と呼ぶ愚行、いつまで続くのか? 小俣よしのぶ(後編) | VICTORY