情報科学とArt
知り合いがConcordiaのArt専攻(修士課程)で、彼(Ian)とそのクラスメートの卒業制作展みたいなのに行ってきた。
・展示の内容
彼の制作(と呼んでいいのかは不明)はちょっと変わっていた。彼は2m×5m位の四角い箱の中にいて、箱と外界をつなぐものは入力デバイスとしてスキャナーが1つ、出力デバイス(?)として箱に小さな穴が空いている(マンションのドアとかについてる新聞を入れる穴みたいなやつ)。
外にいる人が紙に何かを書いてスキャナーに読み取らせると、彼が中でそれを見て、それに応える形で中で紙に何かを書いてその穴から紙を出す。その大きな箱をコンピュータに見立てている感じ。
・文字のやりとり
紙には文字でも絵でも何を書いてもOK。文字の場合の受け答えはこんな感じだった(うろ覚えのもあるけど)。
「Hi Ian!」→「I don’t know Ian.」
「Which team will win the world cup?」→「Brazil」
「Why?」→「They have feet.」
(下の例は出力が中々出てこなかった時のやりとり)
「Are you freezing? How many GHz are you?」→「I feel comfortable. At least 1,000,000 GHz.」
・人工知能と人工無能と人間
自分と同じかそれより上の世代のコンピュータ好きの人なら、「人工無脳」のプログラムと会話して遊んだ事がある人は多いと思う。Ianの「コンピュータ」と何回かやりとりしてるうちにそれに似た雰囲気なのに気づいた。
人工知能って言葉は随分昔から存在するけど、実際に知能を持ってるかのように振る舞うコンピュータってのは存在しなくて、非常に限られた専門分野での会話のみを行うプログラム(エキスパートシステム)ですら非常に難しい状況。
人工無能とは、エキスパートシステムが実用性を目指すの一方で「人間らしさ」を目指したプログラムの事で、人工無能との会話してるとたまに人間同士の会話ではあり得ない面白い反応や的はずれな反応とかがあって、結構楽しめる。Ianはわざとちょっと外した人工無能っぽい答えをしていた気がする。
人間を真似て作られたプログラムの振る舞いを人間が真似するって結構面白いかも。
・フィードバック
彼からの答えは絵が描いてある事が多い。というか絵だけの時も多い。そこで、出力結果の絵に自分が何か付け加えたりして再度スキャナーに読み取らせる。そうすると最初のとは結構違う絵が出てくる。で、それに再度自分が絵とか模様とかを追加したりして再度スキャナーに読ませる。2度目の結果は一番最初の絵とは全く異なったものが出てくる。
これって複雑系のフィードバックプロセスに似てるなぁとか思ったり。でもこの系ではフィードバック関数自体が複雑系ってのが違いか。
・感想
展示(?)は純粋に遊べる楽しいものだったけど、それに加え、見てる時とか家で思い返してみた時にも関連する色んな事が頭に浮かんできて、何というか興味深かった。見に来た人は情報科学系の「会話」をしてる人が結構いて、チューリングマシーンとかカオスについて書いてある紙(出力結果)もいくつか見かけた。
マンデルブローとかのフラクタルのCGとかは何というか退屈なのが多いけど、科学が絡むのでも今回みたいなのは面白くていいなぁと思った。