教養主義の没落

教養主義の没落 / 竹内洋
書店で見てタイトルが面白そうだったから買った。自分は、amazonのレビューにある「そもそも教養主義なることばを知らない」うちの一人だった。もちろん字面からある程度の意味は想像付くけど。
本書では石原慎太郎(著書は読んだ事無い)、丸山真男(名前しか知らない)などを媒介にしつつ戦前から現代に至るまでの教養主義の歴史を書いている。というよりは、教養主義の歴史という視点から見た日本の「知的」文化論みたいな感じか。諸外国のエリート文化との対比、教養主義と共産主義のつながり等、色んな切り口から日本のエリート文化・インテリ文化を検証している。
石原慎太郎に触れた章では、石原の教養主義に対する違和感・嫌悪感を説明し、次の章ではフランスのエリートであるノルマリアン(エリート養成校L’École Normale Supérieure出身者)と帝大文学部を比較分析していて、フランス型教養とは生来のものと考えられているのに対し、日本式教養主義は刻苦勉励型である、と。そして農村出身の秀才による旧制高校的教養主義の貧しさを、都会の新興ブルジョア階級出身の石原が暴いたのではないか、と論じてる。
その後、岩波書店、山の手ブルジョワ文化と下町江戸文化の対比などを軸に論を進めつつ、最後では、70年代以降のサラリーマン文化、大衆文化によって教養主義は完全に壊滅してしまったが、昔の形でそのまま復活させろとは思わないにしろ、同化・適応が過度に蔓延した現代社会において教養について考える事は意義があるのではないか、みたいな結び方をしている。
教養を身につけたいと思ってる人(自分もその一人)、自分は教養があると思ってる人(公言してるにしろ密かに思ってるだけにしろ)、そういう人たちには面白く読める本だと思う。
★★★★☆

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